いい物件って、どんな物件だろう。カフェ開業で、家賃より先に見ておきたいこと。
カフェを開こうと思ったら、まず物件を探す。
駅前。
商店街。
住宅地。
路地裏。
新築。
居抜き。
スケルトン。
物件サイトを見ていると、だんだん「家賃」と「坪数」ばかりを見るようになります。
でも、カフェの物件選びで本当に大切なのは、
安いか、高いか。
だけではありません。
僕が見るのは、
この場所で、ちゃんと営業できるか。
です。
家賃が安くても、工事費が高い物件があります。
立地が良くても、ワンオペでは回しにくい物件があります。
広くても、売上につながらない空間もあります。
逆に、
少し狭くても。
駅から少し離れていても。
営業しやすくて、固定費が低くて、ちゃんとお客さんが来る。
そんな店もあります。
物件は、ただの箱ではありません。
その店の売上と働き方を、かなりの部分まで決めるもの。
今回は、10〜15坪くらいの小さなカフェを想定して、
僕ならどこを見るかを書いてみます。
「人通りが多い」は、正義ではない。
物件を探していると、
「ここ、人通り多いですよ」
と言われることがあります。
たしかに、人がたくさん歩いている場所は魅力的です。
ただ、
人通りが多いことと、
その人たちが店に入ってくれることは別です。
会社員が急いで駅に向かう道。
学生が学校へ向かう道。
観光客が目的地へ移動する道。
同じ100人が歩いていても、
その100人の目的は違います。
だから、
「何人通っているか」
だけではなく、
「どんな人が、何のために、この前を通るのか」
まで見た方がいい。
朝に強い場所なのか。
昼に強いのか。
休日に人が増えるのか。
近くに住んでいる人なのか。
わざわざ来る人なのか。
その人たちが、
自分の店で800円、1,000円、1,500円を使う理由があるのか。
そこまで考えると、
ただの「人通り」が、
少し違って見えてきます。
家賃ではなく、「売上との比率」で考える。
家賃10万円。
安い。
家賃20万円。
高い。
そうやって考えたくなります。
でも、本来見るべきなのは、
家賃単体の金額ではありません。
その店で、どれくらい売れるのか。
たとえば、
月商100万円の店で家賃20万円。
これはかなり重い。
一方で、
月商300万円をつくれる場所で家賃20万円なら、
同じ20万円でも意味が変わります。
物件を探すときは、
「この家賃を払えるか」
ではなく、
「この家賃を払って、利益が残る売上をつくれるか」
と考えます。
家賃は毎月払います。
調子がいい月も。
雨の日が続く月も。
冬も。
夏も。
だから、
背伸びしすぎると、ずっと効いてきます。
内装費は一度。
家賃は毎月です。
この差は大きいです。
安い物件ほど、工事費を見る。
たとえば、
家賃8万円。
15坪。
場所も悪くない。
一見、とてもいい物件です。
でも、
電気容量が足りない。
給排水を大きくやり直す。
エアコンも交換。
トイレも改修。
厨房区画もつくる。
そうなると、
家賃で浮いたお金以上に、
最初の工事費がかかることがあります。
逆に、
家賃12万円でも、
飲食店の居抜きで、
水道がある。
電気も取れる。
エアコンも使える。
カウンターも残っている。
そういう物件なら、
トータルでは安くなることがあります。
だから、
物件を見るときは、
「この物件はいくらで借りられるか」ではなく、
「この物件で営業を始めるまでに、いくらかかるか」
を見る。
ここはかなり大事です。
エスプレッソマシンを置けるか。
コーヒーを主力にする店なら、
ここは最初に確認します。
2連のエスプレッソマシン。
グラインダー。
製氷機。
冷蔵庫。
オーブン。
食洗機。
こういう機械を置くと、
思っている以上に電気を使います。
だから、
物件を気に入ってから確認するのではなく、
候補になった段階で電気容量を見る。
そして、
給水。
排水。
浄水。
ここも確認します。
エスプレッソマシンは、
置けば動くわけではありません。
水がいる。
排水がいる。
電気がいる。
それを後から無理やりつくると、
工事費が跳ね上がります。
カフェの物件探しは、
インテリアの話より先に、
設備の話をした方がいい。
そう思っています。
カウンターの「奥行き」を見る。
物件を見に行くと、
どうしても客席を見ます。
ここにテーブルが置ける。
ここに4席。
窓際にも座れる。
もちろん大事です。
でも、
ワンオペのカフェなら、
僕は客席より先に、
カウンターの中を見ます。
マシンを置く。
グラインダーを置く。
冷蔵庫を置く。
氷を取る。
カップを取る。
ミルクを取る。
会計する。
洗う。
この流れが、
無理なくつながるか。
狭すぎないか。
逆に広すぎないか。
人が入れるか。
ふたり立ってもぶつからないか。
ワンオペの店は、
広ければいいわけではありません。
広すぎると、
歩く距離が増えます。
1杯出すたびに3歩余計に歩く。
それを1日100杯。
1年続ける。
小さな違いですが、
毎日の営業では大きな違いになります。
10〜15坪なら、「全部使わない」。
15坪ある。
だから、
15坪全部に役割を与えたくなります。
ここに客席。
ここに棚。
ここに物販。
ここにも席。
でも、
空間は、
埋めればいいわけではありません。
人が通る場所。
スタッフが動く場所。
お客さんが待つ場所。
荷物を置く場所。
そういう、
売上にならない空間も必要です。
むしろ、
その余白がない店は、
混んだ瞬間に苦しくなります。
小さい店ほど、
1坪を売上に変えたくなる。
気持ちは分かります。
でも、
余白があることで、
店は回りやすくなる。
そして、
お客さんも居心地がよくなる。
だから、
席数だけで物件を判断しない方がいいと思っています。
1階だからいい、とは限らない。
カフェは1階がいい。
これは、たしかに分かりやすいです。
入りやすい。
店内が見える。
テイクアウトも取りやすい。
ただ、
その分、家賃も上がりやすい。
だから、
2階だからダメ。
地下だからダメ。
とは思いません。
目的来店をつくれる店なら、
2階でも成立します。
SNSで知って。
Googleマップで探して。
その店のコーヒーを飲みに来る。
そういう店なら、
多少見つけにくくても来てもらえます。
逆に、
通りがかりだけを頼りにする店なら、
1階の方が強い。
つまり、
立地の良し悪しは、店の集客方法によって変わる。
ということです。
駐車場が必要な街もある。
駅前と郊外では、
同じカフェでも物件の選び方が変わります。
都心なら、
駅から徒歩何分。
人通り。
オフィス。
商業施設。
そういうものが大事になります。
一方で、
地方や郊外なら、
駐車場。
道路からの入りやすさ。
右折できるか。
店を見つけやすいか。
そういうことが大事になります。
徒歩5分の店より、
車で入れない店の方が厳しいこともあります。
だから、
東京でうまくいっている店の立地条件を、
そのまま地方に持ってきても、
うまくいかないことがあります。
その街では、どうやってカフェに行くのか。
ここから考えます。
物件を見に行くなら、時間を変える。
気になる物件が見つかったら、
一度だけ見て決めない方がいいです。
できれば、
朝。
昼。
夕方。
平日。
休日。
何度か見ます。
朝は静かだったのに、
夕方は車が多い。
平日は人がいるのに、
日曜日は誰も歩いていない。
逆に、
平日は静かでも、
休日になると人が集まる。
街には時間があります。
物件情報には、
その時間までは書いてありません。
だから、
自分で見に行きます。
店の前に立って、
10分でもいいので、
人と車を見ます。
意外と、これが一番分かりやすいです。
隣の店を見る。
僕なら、
物件そのものだけではなく、
周りの店も見ます。
どんなカフェがあるのか。
パン屋はあるのか。
美容室はあるのか。
飲食店は続いているか。
閉店が多くないか。
新しい店が増えているか。
そして、
その街に、
自分の店と同じくらいの価格帯のお店があるか。
1杯700円のラテを売りたいのに、
周囲では300円のコーヒーしか売れていない。
それでも成立させる方法はあります。
ただ、
その場合は、
「なぜこの店には700円払うのか」
をかなり強くつくらないといけません。
物件を見るというより、
その街の商売を見る。
そんな感覚に近いです。
居抜きは、本当に安いのか。
居抜き物件は魅力的です。
厨房が残っている。
カウンターがある。
照明もある。
すぐ始められそうに見えます。
ただ、
残っているものが、
自分の店に必要なものとは限りません。
使わない厨房設備。
動きにくいカウンター。
古いエアコン。
不要な壁。
全部撤去するなら、
居抜きの意味がなくなります。
だから、
「設備が残っているからお得」
ではなく、
「自分が使う設備が残っているからお得」
と考えます。
居抜きだから選ぶ。
スケルトンだから避ける。
ではなく、
その店をつくるのに、
どちらが合理的か。
そこだけです。
その物件で、5年やれるか。
物件を見つけると、
早く決めたくなります。
「誰かに取られるかもしれない」
と言われることもあります。
もちろん、
本当にいい物件は早く決まります。
でも、
焦って契約した家賃は、
そのあと何年も払い続けます。
だから、
僕なら最後に、
こう考えます。
この場所で、5年営業する姿が想像できるか。
売上が伸びたとき。
スタッフが増えたとき。
雨の日。
暑い日。
暇な月。
忙しい土曜日。
その全部を、
この物件でやれるか。
店を開けることだけなら、
物件はたくさんあります。
でも、
続けられる物件となると、
少し減ります。
いい物件は、「いい場所」だけではない。
駅前だから。
角地だから。
家賃が安いから。
居抜きだから。
それだけで、
いい物件とは言えません。
電気が使える。
水が取れる。
営業しやすい。
家賃が無理なく払える。
お客さんが来る理由がある。
スタッフが働きやすい。
そして、
何年も続けられる。
それらが重なった場所が、
その店にとっての、
いい物件。
だと思います。
物件探しは、
店をつくる前の話に見えます。
でも実際には、
もうその時点から、
経営は始まっています。



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